「リバティ」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは――ブランドを象徴する存在、リバティ スカーフではないでしょうか。その歩みは、リバティ百貨店の歴史とともに織り重ねられてきた物語。エレガントなスカーフは、まさに「リバティらしさ」を最も体現するアイテムといえます。
1860年代、アーサー・ラセンビィ・リバティ卿が自身の名を冠した店を創業するよりも前、彼の旅はロンドンのショール専門店での販売から始まりました。世界各地から輸入されたスタイルの優雅さと芸術性に魅せられ、1875年に「リバティ」を創業した際、最初に販売された商品のひとつがスカーフだったのです。
それ以来、リバティのスカーフは品質と独創的なデザイン、そして世代を超えて受け継がれる物語によって、世界的な評価を確立してきました。150周年を祝うこの特別な年に、過去から現在へと続くリバティ スカーフの世界を旅してみましょう。
1950年代のスカーフカタログには、こんな一節が残されています。「おしゃれな人々は、リバティのスカーフはいくつあっても足りないと言います。」その言葉どおりの魅力を感じに、リバティの歴史に触れてみてください。
時を超えて受け継がれるスカーフ
1900年代初頭、リバティはマートン・アビー・プリント工房でスカーフやショールをブロックプリントし、世界各地から着想を得たデザインで流行に敏感な人々を魅了していました。現在その工房は姿を消しましたが、リバティのスカーフは今もなお、英国マクルズフィールドの自社プリント工房で一枚ずつ丁寧にプリントされています。
20世紀初頭のファッションにおいて欠かせない定番アイテムとして、リバティのスカーフが真価を発揮したのは1930〜40年代のこと。毎年発行されるカタログには、その年ごとに生み出された多彩なスタイルとデザインが記録されていました。
当時、リバティのスカーフは女性のワードローブに欠かせない存在であり、イラストレーターのジョイス・デニーが1930年代に発表した小冊子には、こんな一文が記されています。
「もし服を買う余裕がないなら、リバティのスカーフを買いなさい。ゴルフからビーチ、ダンスまで、どんなシーンにも似合います。」
初期のクラシックなフローラルや植物モチーフから、1970年代のペイズリー、1980年代のアブストラクト、そして21世紀のデジタルプリントまで――リバティは常に職人技と華やかな美しさを追求し続け、プリントデザインの最前線に立ち続けています。
アーカイブから紐解く
新しいスカーフの旅は、たいていリバティのアーカイブから始まります。社内デザインチームはアーカイブ担当者とともに、次なるデザインのインスピレーションとなる宝物を探し出すのです。
「この尽きることのないインスピレーションの源、そして真のオリジナリティを感じさせる出発点を持てることは、本当に特別なことです」と語るのは、リバティ・デザインスタジオのテキスタイルデザインコンサルタント、ジャクリーン・エドニー。「デザインを考えるときは、アーカイブチームと協力しながら、特定のアートワークや資料を探していきます。」
150年にわたるファッション、ファブリック、プリントの歴史を誇るリバティのアーカイブには、繊細なスワッチからプリントブック、無地のシルク地まで、あらゆる資料が揃っています。「アーカイブに残された資料の美しさは、時に大胆に異なる色や柄を組み合わせて記録されている点です」とエドニーは続けます。
シニアデザイナーのアレクサンドラ・ラヴァットもこう語ります。「私たちの最も魅力的なデザインの多くは“会話するような”アートなんです。スカーフがまるで一枚のキャンバスのようになり、そのキャンバスがたまたまシルクでできている、という感覚です。アール・ヌーヴォー調の意匠やフローラル、アーツ・アンド・クラフツのスタイルなどを数多く扱っていますが、私自身が特に好きなのはアーカイブに眠る抽象的なデザイン。とても現代的で、初めて見る人はリバティのものだと信じられないほどです。」
こうして、デザインプロセスが本格的に始まります。「私たちはそれぞれのスカーフに合わせた唯一無二のアートワークを一から手描きで制作し、デジタルで丁寧に仕上げていきます。完成後は、アーカイブの原点やシーズンのファブリックコレクションに合わせて、複数のカラーバリエーションを展開していきます。」
一針一針に込められた想い
手仕事の伝統を受け継ぎ、リバティのスカーフはすべて、マクルズフィールドとイタリアの熟練プリンターによってシルクにプリントされます。デザイナーと職人が協力し、それぞれのスカーフに最適な技法を駆使して仕上げるのです。「複数の影響源や展覧会、トレンドを参考にすることもありますし、ときには美しい新素材や印刷技法に導かれることもあります。それを実現する完璧なデザインを探すのです」とラヴァットは説明します。
「イタリアや英国のサプライヤーを訪れ、革新的なプリント方法や仕上げ技術、ウォッシュ加工、糸の組み合わせなど、新たに開発された技法を確認することもあります。」とエドニーも語ります。
150周年を祝う最新コレクションでは、リバティのデザインチームが革新的な技法を取り入れ、ブランドの長い歴史を現代に引き継ぐデザインを生み出しました。リバティそのものを主役に据えたこのコレクションでは、150年前と同じように、すべてのデザインがスタジオで手描きされています。
リバティ スカーフの世界
軽やかなシルクのハンカチサイズのスカーフから、贅沢で暖かなカシミヤのショールまで――現在のリバティのスカーフは、形もデザインも幅広く、その魅力は今なお色あせることがありません。
「リバティには豊かなプリントの歴史があるため、特別なアイテムであるスカーフにリバティのプリントを身に着けられることには、大きな喜びがあります」とラヴァットは語ります。「リバティのスカーフは、スカーフ専門店としてオープンした何十年も前から、私たちの店の象徴でした。私たちは常にスカーフの目的地であり続け、デザインチームでも、その伝統を尊重しながら、今日も美しいスカーフデザインを生み出すことを心がけています。」
