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Interview

色と柄をもっと日常に――『モダンリビング』下田結花さんに聞く

Liberty Japan Co., LTD.

色や柄をプラスするだけで、空間の印象ががらりと変わったり、おしゃれに新しい風が吹いたり……。インテリアやファッション、テーブルコーディネートなど、さまざまな分野で活躍する方々に、それぞれの視点で色と柄の効用、取り入れ方を語っていただきます。今回は、雑誌『モダンリビング』パブリッシャー、下田結花さんです。

雑誌『モダンリビング』のパブリッシャー(発行人)を務める下田結花さん。インテリア取材のキャリアを重ねるなかで、日々の暮らしを豊かに、心地よく紡ぐことへの思いをいっそう深めているといいます。色や柄を加えて、いつもの風景を少しだけ変えてみる。そんな小さなアイデアを伺いたくて、ご自宅を訪ねました。

初めてのイギリス取材で知った心地よさが、暮らしの骨格となった 緑が溢れ、風が軽やかに通り抜ける。都心にほど近い、しかもマンションの一室とは思えない自然で穏やかな空気が、そこには流れていました。築40年のマンションを思い切ってリフォームしたのが6年前のこと。「コンクリートの中に“木の家”をつくる」というコンセプトに、なるほどと納得。そこかしこに配された小ぶりなテーブルやチェストなどアンティークの家具もまた、温もりのある空間づくりにひとやく買っています。
「『モダンリビング』に携わるまだずっと前のこと、初めてイギリスへ取材で出かけたのですが、幸運なことに、普通のイギリス人の当たり前の生活というものに触れることができたんですね。特に印象に残っているのは、コッツウォルド地方に暮らす老夫婦のお宅です。17世紀の家を改装した住まいのいたるところにアンティークの家具が置かれていて、ランチなのにキャンドルを灯して、シルバーのカトラリーを用意して……。なんて素敵なんだろう、と衝撃を受けました。思えば、そのときの体験が、私にとってインテリアの目覚めでした」
 90年代初頭、日本でも状態のいいアンティーク家具が手頃な値段で手に入るようになっていました。折にふれて少しずつ買い集めてきた家具たちは、今ではすっかり下田さんの暮らしになじんでいます。
「かつてイギリスの暮らしを通して知ったコンパクトな家具が、私のライフスタイルには合っているのだと思います」

陽射しが注ぎ、風が渡る居心地のいいリビングルーム。印象が強いソファのイエローは、カバー代わりのブランケットで色の面積を自在に調節。

ファッションと同じように、色や柄はまず小物から始める さて、そんな居心地のいいリビングルームで、ひときわ印象的なのが鮮やかなイエローのソファです。
「インテリアにカラフルなものを取り入れるのは、日本ではなかなか難しいのかなと思います。このソファですら結構驚かれたりしますから。実際、セミナーでもよく『インテリアに、どう色や柄を取り入れたらいいですか』と質問をいただくのですが、私は『ファッションと同じで、まずは小物から始めませんか』とお答えします。大きな家具ではなくて、簡単に替えられるもの、たとえば布ものなんていいですよね。季節ごとにクッションを替えてみるとか。もっといえば、わざわざクッションカバーを買い替えなくてもいいんです」
そう言って、テーブルセンターとして敷かれていたプリントの布で無地のクッションをくるりと包み込む。すると、イエロー×パープルのプリントがソファの色とつながり、たちまち小さなアクセントに様変わり。

大判のプリント布がクッションカバーに早変わり。お手軽で、すぐに取り入れたいアイデア。

「器にしても、華やかなプレートが一枚あるだけで食卓が豊かになります。何かを盛ってもいいし、盛らなくてもあるだけで絵になる。テーブルセッティングの文化がない日本では、センターピースをどうするか悩ましいところですが、美しい柄の器が解決してくれるのではと思います」
取材終わりに振る舞ってくださったおいしい紅茶。カップ&ソーサーは、ブラックベリーが描かれたロイヤルウースターの“ラビニア”、シルバーのティーストレーナーもイギリスのアンティークです。
「普段は、シンプルで実用的な北欧のグラスやカップを愛用しています。でも、こうした柄物の器には、無地にはないエレガンスや華やかさがありますよね」
 ささやかな心の華やぎが、慌ただしい日常にふっと軽やかなリズムを刻んでくれるのだと気づかされました。

ローズマリーの香りが効いたお手製レモネードをウェルカムドリンクに。

おもてなしの時間を彩るだけでなく、気分をリセットしたいひとりのときも心に響く美しい柄。

『モダンリビング』No.238(ハースト婦人画報社)。家とインテリアのラグジュアリー住宅誌。No.238は「都市の豪邸」がテーマ。Part1 隈研吾 今、「都市の住宅」に求めるもの Part2 季節の移ろいを都市の暮らしで感じ取る邸宅 など。

『心地よく暮らすインテリアの小さなアイデア109』(講談社)。モダンリビングの編集長を長く務め、多くの家を取材し、様々なインテリアを見てきた著者。その著者が心地よい住まいにするための自宅マンションで行っているインテリア・暮らし方のアイデア集。

下田結花/Yuka Shimoda

『モダンリビング』(ハースト婦人画報社)パブリッシャー。料理、マナー、メイク、着物の書籍や別冊の編集を経て、雑誌『ヴァンテーヌ』に14年間在籍。2003年から『モダンリビング』の編集長、16年から現職。ブランド全体を統括するとともに、ウェブでの発信や、インテリアにまつわる講演、セミナーなども行う。著書に『心地よく暮らすインテリアの小さなアイデア109』(講談社)

photo: yOU
edit&text: Terue Kawai